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ぎんがのうち 

永遠に繰り広げられる 光と闇のランデブー。螺旋に揺らぎながら僕らは今日も歌い踊る。

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ひとりのひとと 美しい木のこと

美しい木があった。
彼女は葉をオレンジ色に染めていた。


ひとりのひとが彼女に出会った。
そのひとは彼女の下に立ち
太陽の光を浴びてオレンジ色に輝く
彼女の葉っぱの裏側をうっとりと眺めた。


しばらくしたある日のこと、
ひとりのひとは彼女に再び出会った。
いつかの日の彼女のオレンジ色の葉っぱは
随分と葉を落とし少なくなっていた。


それからひとりのひとは
オレンジ色の葉をつけていた彼女が
今日切り倒される運命にあることを知った。彼女が立っていた場所には
新しく人の家が建てられるのだ。


ひとりのひとは淋しい氣持ちになった。
彼女を残して新しい家を
建てられないものだろうか。
けれども ひとりのひとは
どうすることも出来なかった。


そして ひとりのひとは
今日切り倒されるであろう
彼女の根本に 持っていた水をあげた。


とうとう彼女が切り倒されるときが
やってきた。
ひとりのひとは彼女が
切り倒される瞬間に立ちあった。


そして、ひとりのひとの瞳は見た。
切り倒された彼女の枝葉は
これまで見たこともない輝きを放っていた。彼女の枝葉は切り倒されて一層と
キラキラと生命の美しさを
輝かせているかのようだった。


ひとりのひとは
言葉にならぬ氣持ちになった。
涙が頬を伝った。
するとやがて どこからか声が聴こえた。


ありがとう。
わたしは 今日この瞬間
切り倒される運命にありました。
わたしがわたしであった最後の瞬間を
あなたが愛してくれて
わたしは幸せでした。


わたしはこれから
大きなひとつの生命の源へ還ります。
だから氣を落とさないで 元氣を出して。
ありがとう。


ひとりのひとはやがて
彼女のことを忘れていくだろう。
それでも またいつかの秋に
彼女のことを思い出すかもしれない。


最後の瞬間に彼女が
虹色に光輝いていたことを。




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